1990 7.27 ゴルバチョフ大統領と初会見から30周年

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池田先生「今日は大統領と“けんか”をしにきました。
火花を散らしながら、なんでも率直に語り合いましょう。人類のため、日ソのために!

ゴルバチョフ大統領「私も率直な対話が好きです。会長とは、昔からの友人同士のような気がします。


池田先生「世界平和を愛する一人の哲学者として、大統領の訪日を念願しています
大統領「絶対に実現させます」「できれば春に訪れたい

日ソ両国の関係が冷え込んでいた折に、歴史的な転換点ともいえる会見でした。

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ライサ夫人と創価大学訪問 ゴルバチョフ夫婦桜を植樹

両氏の変わらぬ友情を象徴するかのように毎年、桜の花が咲き、創立者池田先生が築かれてきた日露友好の礎によって、創価大学にはロシアから絶大な信頼が寄せられています。



ミハイル・ゴルバチョフ

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ミハイル・ゴルバチョフソ連大統領、元共産党書記長

1985年3月にソビエト連邦共産党書記長に就任し、内政では停滞していたソ連の政治経済の抜本的改革を目指しペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)を断行、外交では新思考外交に基づき西側諸国や中国に歩み寄り、東欧の民主化革命を支持するなどして冷戦を終結させます。

また軍縮・廃絶に積極的に取り組むが、当初は”単なる宣伝”と心ない批判にさらされます。その中で池田先生はノーボスチ通信に氏の取り組みを支持する所信を寄稿。翌年にもソ連「新時代」誌が同趣旨の先生の論文を掲載し、英語やフランス語などでも紹介されます。氏の努力は実を結び、87年にアメリカとの間で中距離核戦力(INF)全廃条約が締結。89年にはマルタ会談で米ブッシュ大統領冷戦終結を宣言し、世界規模の対立に終止符を打ったのです。

しかし、ソ連国内の民族主義を抑えることができず、保守派と改革派に国内の政治勢力が分裂する中、1991年の「8月クーデター」を招き、新連邦条約締結に失敗。結果として、ソ連共産党一党独裁体制とソ連そのものを終結・崩壊へと導くこととなりました。

1990年、ソ連で最初で最後となる大統領に就任し、同年にはノーベル平和賞を受賞した。西側諸国などでは広範な人気があり、ゴルビーの愛称で親しまれています。

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1987年 INF全廃条約調印 (レーガン米大統領とワシントンDCで)

 

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1989年 マルタ会談・冷戦終結宣言(ジョージ・H・W・ブッシュ米大統領と)

 

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米ソ冷戦の雪解けムードが感じられる一枚ですね


軍縮の歩みと現在

INF条約では射程が500km(300マイル)から5,500km(3,400マイル)までの範囲の核弾頭、及び通常弾頭を搭載した地上発射型の弾道ミサイル巡航ミサイルの廃棄を求めていました。その結果、条約が定める期限である1991年6月1日までに合計で2,692基の兵器が破壊されましたが、アメリカは2019年2月に本条約の破棄をソ連の後継であるロシア連邦に通告し、これを受けてロシア連邦も条約義務履行の停止を宣言。2019年8月に同条約は失効しました。

ゴルバチョフ氏は2018年10月、中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱するとドナルド・トランプ米大統領が表明したことについて、軍縮達成への努力をひっくり返すものと非難していましたが、アメリカは「ロシアが、INF条約に違反している疑いの濃い9M729(SSC-8)地上発射型巡航ミサイルを廃棄しない」ことを理由に離脱したのです。一方、中国で軍事戦略の柱とされるのは中距離弾道ミサイルの「東風26(DF-26)」というもので、米軍基地があるグアム島を射程におさめていることから通称「グアムキラー」と呼ばれ、米国の脅威となっています。

 

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ロシアの9M729(SSC-8)地上発射型巡航ミサイル

 

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中国の中距離弾道ミサイル東風26(DF-26)


米ソ調印当時は2国間だけの軍縮で十分と考えられていたのですが、30年経った現在では状況が変化し、とくに同条約の拘束を受けない中国が対象となる兵器を1400~1600発保有しながら、さらに増強する見込みのため、アメリカとしては中国を巻き込む形で多国間での軍縮を進めたい考えのようですが、中国はこれに応じない姿勢のようです。



そして”SGI提言”
池田SGI会長は今年のSGI提言で次のように訴えています。

アメリカとロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)の延長を確保した上で、多国間の核軍縮交渉の道を開くことが肝要となると考えます。新STARTは、両国の戦略核弾頭を1550発にまで削減するとともに、大陸間弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイルなどの配備数を700基にまで削減する枠組みで、明年(2021年)2月に期限を迎えます。5年間の延長が可能となっていますが、協議は難航しており、INF全廃条約に続いて新STARTの枠組みまで失われることになれば、およそ半世紀ぶりに両国が核戦力の運用において〝相互の制約を一切受けない状態〟が生じることになります。この空白状態によって生じる恐れがあるのは、核軍拡競争の再燃だけではありません。今後、小型の核弾頭超音速兵器の開発が加速することで、局地的な攻撃において核兵器を使用することの検討さえ現実味を帯びかねないとの懸念の声も上がっています。

ゆえに、新STARTの5年延長を確保することがまずもって必要であり、NPT再検討会議での議論を通して、核兵器の近代化に対するモラトリアム(自発的停止)の流れを生み出すことが急務だと訴えたい。その上で、「次回の2025年の再検討会議までに、多国間の核軍縮交渉を開始する」との合意を図るべきではないでしょうか。50年にわたるNPTの歴史で、核軍縮の枠組みができたのはアメリカとロシアとの2国間だけであり、多国間の枠組みに基づく核軍縮は一度も実現していませんNPTはすべての核兵器国が核軍縮という目標を共有し、完遂を誓約している唯一の法的拘束力のある条約であることを、今一度、再検討会議の場で確認し合い、目に見える形での行動を起こす必要があります。

 

具体的な進め方については、さまざまなアプローチがあるでしょうが、私はここで一つの試案を提示しておきたい。それは、「新STARTの5年延長」を土台にした上で、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5カ国による新たな核軍縮条約づくりを目指し、まずは核軍縮の検証体制に関する対話に着手するという案です。これまでアメリカとロシアが実際に行ってきた検証での経験や、多くの国が参加して5年前から継続的に行われてきた「核軍縮検証のための国際パートナーシップ」での議論も踏まえながら、5カ国で核軍縮を実施するための課題について議論を進めていく。その上で、対話を通じて得られた信頼醸成を追い風にして、核兵器の削減数についての交渉を本格的に開始することが望ましいのではないかと思います。多国間の核軍縮の機運を高めるために重要な鍵を握ると考えるのは、冷戦終結の道を開く後押しとなった「共通の安全保障」の精神を顧みることです。