ダイヤモンド原石の起源

前回、プラチナは宇宙の遥か彼方で生じる「中性子性の衝突合体」で生成されるというテーマを扱いました。
では同じ鉱石の中でも「宝石の王様」といわれるダイヤモンドの原石はどのようにできるのでしょうか。それは・・・

地球の内部で生成されます。

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地球の地下150㎞以上深い、地球誕生からカンブリア紀以前(約5億年頃前)にかけてできたマントル層で、1100℃の熱と45万気圧もの超高温高圧力炭素が結晶化しました。これがマグマとともに一気に地表に噴き出し、地表で冷やされてダイヤモンドの原石となったのです。このダイヤが噴出される現象は地球の歴史でたった7回しか生じていないそうです。他の鉱石よりも地球の深層部に由来するのが特徴です。

地表に噴出した天然ダイヤの原石は、キンバーライトという火成岩に含まれています。

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その辺の公園には落ちてなさそうですね。


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ところで、ダイヤモンドと鉛筆の芯に使われる黒鉛(フラファイト)とは分子構造が違うだけで、どちらも元々は同じ炭素(元素記号C=カーボン)仲間です。

 

では鉛筆の芯は柔らかいのに、ダイヤモンドはなぜ硬いのでしょうか?
それは分子の構造が違うからです。
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左がダイヤモンド、右が黒鉛グラファイト)の分子です。

図からはダイヤモンド分子が立体的であるのに対して、黒鉛の方は平面的な分子が層状になっているように見えます。ダイヤモンドの硬さ(硬度)は、この結晶構造に由来するといいます。その結晶化プロセスが、上で述べた超高密度な圧力とマグマが一瞬で地表に噴出する一連の過程よりなるそうです。


また両者は、同じ炭素でできているといっても、見かけも硬度も希少性もまるで違っており、ダイヤモンド黒鉛に変化(相転移)することはあっても、黒鉛ダイヤモンドになることはほぼ不可能です。地球内部のような超高温高圧の環境を再現できないためです。


そして非常に硬いので衝撃に対して強い傷一つつかないというイメージがありますが、実際は緩やかな圧力に対しては耐性が強くても、ハンマーで叩くなど一瞬で圧力を加えることには弱いらしく、粉々に砕け散ってしまいます。

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壊れないだろうと思って、試しに叩いたりしたら大変ですよ。



世界最大のダイヤ

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世界最大のダイヤ3106カラットの「カリナン」で「偉大なアフリカの星 (The Great Star of Africa)」とも呼ばれています(右図)。2019年には、南アフリカレソトで史上5番目となる910カラットのダイヤモンド原石が発見されました(左図)。いずれもアフリカ産です。

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2018年にもカナダで552カラットイエローダイヤモンドが採掘されています(左図)。
それまで北米最大といわれていたのが187カラットの「フォックスファイア(Fox Fire)」(右図)ですので、2018-2019の発見がいかに大きいものかがわかります。



ダイヤモンドの星が存在する?

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かに座の55番星eは3分の1くらいがダイヤモンドでできているそうです。

このダイヤモンドの惑星は、超新星爆発後に残った中性子星パルサーの衛星だそうです。中性子星は超高速自転しながら電波やX線を放ち、周期的に発光するほぼブラックホールに近い天体です。そんな超高密度天体のすぐそばにある衛星といいますから、おそらくあらゆる生命体は生存できず、はやぶさのような無人探査機も、重力に引き込まれて潰れてしまうでしょう。宝の山でありながら誰も辿り着くことのできない夢のような星です。上は想像図ですが、実際に見ることができたら感動的な景色なのでしょうね。



次回は「ダイヤはダイヤでしか磨けない」の発見 についてです。