核兵器禁止条約第1回締約国会議に寄せて(ラメッシュ・タクール氏)

2022年6月19日付の聖教新聞より
核兵器禁止条約第1回締約国会議に寄せて 
ラメッシュ・タクール氏 インタビュー
オーストラリア国立大学名誉教授。国連事務次長補、国連大学上級副学長などを歴任) 

ラメッシュ・タクール氏

 

核兵器禁止条約は2017年7月7日に採択され、50ヶ国の批准をもって2021年1月22日に発効。
国際社会で核兵器の製造、運用は違法となり、禁止されました。
しかし依然として非加盟国には効力が及ばず、核廃絶にはまだ様々な問題があります。
以下、記事の引用(黒色)です。
青色文字はブログ主のコメントです。



――核禁条約が国連で採択されてから来月で5年を迎えます。まず同条約の意義をどう評価していますか。

多国間の枠組みによる軍備管理の成果としては、1970年に発効したNPT(核拡散防止条約)以来、この半世紀で最も大きなものと言えるでしょう。NPTが50年にわたって世界の核体制の安定を支え、十分ではないにせよ、核の拡散に歯止めをかけてきたことは間違いありません。
 
核兵器の不拡散に関する条約(NPT) 1970年に発効
(目的)米露英仏中の5か国を「核兵器国」と定め「核兵器国」以外への核兵器の拡散を防止する。
締約国数は191か国・地域(2021年5月現在)。
非締約国はインド、パキスタンイスラエル南スーダン
 
世界の核兵器数は、冷戦期のピーク時(1987年頃)に70,000発でしたが、
米ソ間で交わされたINF(中距離核戦力全廃条約、レーガンゴルバチョフが署名)を境に着実に減少し、
2019年1月時点で13,865発となっています。このうちの90%以上を米露が保有
核兵器保有数は、ピーク時から現在までずっと下降線をたどっています。
 
1950年代 核開発競争 ~約20,000発
1970年 NPT発効 約40,000発
1987年 INF条約 約70,000発(ピーク)
1989年 ベルリンの壁崩壊
1991年 ソ連崩壊
    START成立
1995年 NPT無期限延長
1996年 CTBT(包括的核実験禁止条約)採択(未発効)
2010年 新START成立
2017年 TPNW(核兵器禁止条約)採択 15,000発
2021年 同条約発効

世界の核弾頭数推移(毎日新聞
このようにみるとピーク時から20%まで減少しており、一定の成果はあったともいえます。
 
――核禁条約は、批准していない国には効力を持ちません。そのため、“核兵器を持つ国が批准していないのだから意味がない”という批判があります。

確かに批准していない国に対する効力はありませんが、一方で、国連で議論され採択された条約が「何の力も持たない」とは言えないでしょう。122カ国の賛成で成立した倫理的、法的規範であり、核兵器の所有や核抑止の根拠を揺るがす力になります。もう一つ、この条約には重要な意義があります。国際政治においても国連の仕組みとしても、地政学的な中心は米英仏中露の5カ国が常任理事国を務める安全保障理事会にあります。しかし核禁条約は、安保理ではなく、全加盟国からなる総会で採択されました。国際安全保障政策における重要な民主的変化であり、核兵器に対する規範の確立という点からも特筆すべき進歩と言えるでしょう。
 
保有国は批准してないから効力がない、とはこれもよくいわれる議論ですが、
同条約に批准し、核廃絶を表明する国の方が圧倒的に多いこと、
そして国連総会で民主的な決定がなされたことは、少なからぬ説得力を持ち、
保有国の正当性を揺るがすものと期待できます。


続きはのちほど・・・