G7 広島サミット 「核兵器なき世界」へ

核兵器なき世界の実現に向けて

5月19日から広島でG7サミットが開催されています。
各国首脳が集い、広島の記念公園や原爆資料館を訪れたのは、史上初めてです。

核大国ロシアによるウクライナ侵攻をいかにして早期終結に導くか、
また「核兵器なき世界」をどのように実現していくのか、
歴史上唯一の被爆地となった広島はこれらのことを考え、各国のリーダーたちが新たな決意を表明する上で最も相応しい場所といえるでしょう。


今回のサミットで大きな関心が寄せられていたのが原爆資料館への訪問ですが、各国首脳たちが揃って見学できたことは大変大きな意義があったと思います。とくに現職のアメリカ大統領による資料館訪問は2016年のオバマ大統領に次いで2人目であり、画期的であったといえます。ただ資料館を実際に見学する様子は非公開となっていました。アメリカを始め、イギリス、フランスなど核保有国も含まれるため、各国の事情に配慮してのことでしょう。資料館には原爆の悲惨さを物語る展示物があり、来場者が時に涙し、感傷的な様子がみられますが、今回は各首脳たちが、資料を通じ、被爆の実相をみて、何を思い、感じたのかを表情から読み取る機会はありませんでした。しかし、オバマ大統領が広島訪問の際、資料館に滞在したのは10分程度だったことから、今回約40分間滞在できたことは、大きな前進だったといえるでしょう。何事も一気呵成にいくものではありません。何より、各国首脳たちが原爆資料館にある芳名録に、平和へのメッセージとそれぞれの思いを言葉で記したことは、核なき世界と世界平和を望む人々には大きな希望となったに違いありません。


G7各国首脳が平和記念公園で原爆慰霊碑に献花(19日)


原爆資料館(各国首相の芳名録)

岸田総理大臣
歴史に残るG7サミットの機会に議長として各国首脳と共に「核兵器のない世界」をめざすためにここに集う

マクロン仏大統領
感情と共感の念をもって広島で犠牲となった方々を追悼する責務に貢献し、平和のために行動することだけが、私たちに課せられた使命です。

バイデン米大統領
この資料館で語られる物語が、平和な未来を築くことへの私たち全員の義務を思い出させてくれますように。世界から核兵器を最終的に、そして、永久になくせる日に向けて、共に進んでいきましょう。信念を貫きましょう!

トルドー加首相
多数の犠牲になった命、被爆者の声にならない悲嘆、広島と長崎の人々の計り知れない苦悩に、カナダは厳粛なる弔慰と敬意を表します。貴方の体験は我々の心に永遠に刻まれることでしょう。

ショルツ独首相
仮訳:この場所は、想像を絶する苦しみを思い起こさせる。私たちは今日ここでパートナーたちとともに、この上なく強い決意で平和と自由を守っていくとの約束を新たにする。核の戦争は決して再び繰り返されてはならない。

メローニ伊首相
本日、少し立ち止まり、祈りを捧げましょう。本日、闇が凌駕するものは何もないということを覚えておきましょう。本日、過去を思い起こして、希望に満ちた未来を共に描きましょう。

スナク英首相
シェイクスピアは、「悲しみを言葉に出せ」と説いている。しかし、原爆の閃光に照らされ、言葉は通じない。広島と長崎の人々の恐怖と苦しみは、どんな言葉を用いても言い表すことができない。しかし、私たちが、心と魂を込めて言えることは、繰り返さないということだ。

ミシェル欧州理事会議長
80年近く前、この地は大いなる悲劇に見舞われました。このことは、われわれG7が実際何を守ろうとしているのか、なぜそれを守りたいのか、改めて思い起こさせます。それは、平和と自由。なぜならば、それらは人類が最も渇望するものだからです。

フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長
仮訳:広島で起きたことは、今なお人類を苦しめています。これは戦争がもたらす重い代償と、平和を守り堅持するというわれわれの終わりなき義務をはっきりと思い起こさせるものです。

外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ms/g7hs_s/page1_001692.html

 

19日夕方には世界遺産である宮島・厳島神社を訪問し、会食が行われました。

厳島神社には平清盛が奉納した装飾経・国宝「妙法蓮華経30巻」(開結含む)が収蔵されています。清盛の願文に「善を尽くし、美を尽くし」とあるように、荘厳で美しい経典です。

グローバルサウスへの関与

今回、岸田首相はG7以外の新興国の首相らも招待していました。先進国のG7に対して、グローバルサウスの国々は発展途上であり、大国と比べると立場の弱い国です。これらの国々は、ロシアとの経済的、軍事的な結びつきがあり、ウクライナ侵攻を明確には非難しがたい現状にあります。今回は、その中でも核保有国であり、西側諸国ともロシアとも一定の距離を保つインドの動向に注目が集まっていました。
モディ・インド首相は昨年9月にプーチン大統領と会談し、「今は戦争すべき時ではない」と苦言を呈したものの、インドは国連での対ロ非難決議には度々棄権し、曖昧なスタンスでもありました。原油などロシアの安価な資源を頼る現状があり、インド国民の生活と経済を守っていくことも新興国として死活問題となっています。

しかしそんな中でサミットに参加したインドメディアが、核なき世界の実現へ、力強い意思表明をしていたのが印象的でした。



インド国営放送「DD」キャスター アミリット・パール・シンさん

ウクライナ侵攻でインドが果たすべき役割は一つで、理性的な声を上げることです。外交と対話によって模索することが、ロシア国民とウクライナ国民にとっての利益となるでしょう。」
インドは核保有国です。しかしインドは、全世界の核兵器廃絶を望んでいます

と、力強い言葉。


また今回、インドは広島に非暴力の象徴的人物であるガンジー像を寄贈しました。ガンジーはイギリスの支配下において祖国インドを独立に導いた平和指導者であり、ここにおいて「法の支配に基づく国際秩序を守り、力による現状変更は許されない」という広島サミットの精神を、インドらしく表しているように思いました。

 

広島に寄贈されたガンジー

 

ゼレンスキー大統領の来日、参加

そしてなんとゼレンスキー・ウクライナ大統領が電撃来日し、G7に参加しました。
到着後、ツイッターに意気込みを投稿していました。
日本だ。G7だ。ウクライナのパートナーや友人との大事な会議だ。勝利に向けた安全と協力拡大。今日、平和が身近になっていく

フランス機で日本に到着したゼレンスキー大統領

 

到着後は、各国首相と精力的に会談を重ねている模様です。

戦火のウクライナから離散した国民からも強い支持を集めています。

せっかく広島に来たからには、ぜひ原爆資料館を訪れていただきたいですね。

 

SGI提言 G7で「核兵器の使用・威嚇許されない」と発信を

G7は20日、「核兵器による威嚇は許されない」と表明

www.jiji.com

創価学会池田大作名誉会長は、先月4月27日に、G7は「核兵器の使用や威嚇は許されない」というメッセージを力強く発信するよう求める提言をしていました。

また、ウクライナ情勢の早期終結を目指し、重要インフラや民間施設への攻撃の即時停止を実現したうえで、戦闘の全面停止に向けた交渉を、医師や教育者など市民の代表がオブザーバー参加する形で行うことを提案しています。

核兵器の使用や威嚇は許されないというメッセージを広島から力強く発信すべきだと指摘したうえで「核兵器の先制不使用」の誓約に関する協議を、G7が主導して進めるよう呼びかけていました。

 

www.sokagakkai.jpwww3.nhk.or.jp

 

最後に

現在の核兵器の威力は、広島、長崎と比べものにならないほど破滅的であり、核戦争はいかなる場合も避けなければなりません。しかしながら、誰もが核兵器のない世界を望みながら、現実にはなかなかその道筋が見えてきません。軍事的な抑止力が一定の効果を果たしているのも事実でしょう。またもし全廃できたとしても、どこかの国が持ってしまえば、他の国は非力な状態に陥り、太刀打ちできなくなるのではないかという懸念もあります。しかし核兵器が存在し続ける以上、キューバ危機のような核戦争勃発スレスレの状況や、落下や暴発による事故、誤認発射などの懸念も絶えません。核兵器はそれ自体が絶対悪であり、それを維持するために莫大な予算も毎年かかるのですが、同時にそれは強大な権力を裏付けるものでもあるため、一度それを手にしてしまうと簡単には手放すことができないのでしょう。それを対外的な力の誇示であったり、脅威に対する安心の備えと考える人々がたくさんいるのです。ゴルバチョフ大統領の登場でかつての東西対立・冷戦は終わりを迎え、一時は局所的・地域的なテロとの戦いに入ったともいわれました。しかし今また大国同士の対立・分断が新たな形で生じつつあります。喧嘩両成敗とはいいますが、現在の価値観からいえば、法の支配や秩序を無視した、力による一方的な現状変更の試みは、現実に耐えがたい災禍を招いています。対話が重要だと言いながら、往々にして両者の言い分はすれ違います。物事が対話を通じて合意や解決を得られていくならいいですが、世の中には話が通じない人や話が無理なら腕づくでという人が必ずいるわけです。とはいえ、人類は大きな災禍を何度も経て、現在の国際秩序ひいては人権、自由を勝ち得てきました。核兵器もピーク時には7万発もあったのが、核軍縮の努力によって1万発程度に抑えられてきているのも事実です。ですから大きな視野に立てば希望的観測を持てるかもしれませんが、人間は痛い目に合わないとわからない、という愚かな存在でもあるため、できれば大きな災厄を招くことなく、知恵を紡ぎ、平和の実現をめざしたいと思うのです。これらを踏まえて端的に思うのが、まず教育が大事だということ。もっといえば根底にある価値観、精神性。世の中が平和なのはいいですが、あまりにも無関心すぎると危機的な状況に陥るかもしれません。市井において日常で核廃絶が話されることはほとんどありません。政治や宗教はとくに遠ざけられます。次に創造的文化。価値観の違う国や人同志の共感や敬意。共通の理解など。そういう文化的要素の重要さは、アインシュタインフロイトの対話でも指摘されていました。またこれは非常に主観的な見解ですが最近になって、マクロで起きていることはミクロで起きていることと相関しているとも感じます。多様性の世の中にあって百人百様であり、自分とは毛並みの違う人々がたくさんいて、人間関係でさえ簡単ではありません。じつはそういう所にも問題の根があるのだろうと思います。会話は誰もがしてますが、必要なのは同じ目線に立った対話ではないでしょうか。命令的、高圧的、一方的、侮蔑的、抑圧的な力関係は負の連鎖を生みだしていくだけでしょう。理解と共感を得ていくプロセスをなおざりにされているように思います。一方の側にだけ都合のいい解釈や論理、押し付けや非難は、反発や怒りを生むだけであり、一方の側に徹底的に我慢や苦痛を強いる方法では、好ましい結果にはならないと思うのです。強者は往々にしてこのように振る舞いがちです。また匿名性の高い人々もこのような心理を抱く傾向があります。全部相手が悪い、全部誰々に非があると責め立て、自己正当化を図るのです。しかし「驕れる者は久しからず」で、理解や共感を軽視しては何事も成就できません。自ら掲げる理念や精神性に背く振る舞いをすべきではありません。誰もが言い分を持っているのです。皆が言いたいことの言える時代になったとはいえますが、言いっぱなしが目立ちます。反論や異なる見解には耳を傾けようとしないし、相互理解に至るような踏み込んだ対話というのはなかなかみられません。これはたぶん学びと素養によるのだろうと思います。では、長々と失礼しました。ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。