「永遠の平和の上に」レヴィタン

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永遠の平和の上に

イサーク・レヴィタンはリトアニア出身の移動派の画家。貧しいユダヤ人家庭に生まれ、赤貧の日々を過ごす。モスクワの美術学校で絵を学べたのは絵の才能を認められ奨学金を受けられたからである。またこの頃に起きたテロ事件と関連付けられ、ユダヤ人追放が盛んになり一家が郊外へ逃れることになってからも、芸術家愛好家らの働きによってモスクワへの帰還を赦されている。有名な慈善家で芸術収集家パーヴェル・トレチャコフもレヴィタンの絵を買い上げている。

彼が最も好んだのは森林や穏やかな田舎にある詩的な場所であった。彼の作品で特徴的なのは、静まりかえっていて、ほとんど憂愁の空想が田園の風景に囲まれて、人の存在を欠いているところにある。彼は漠々とした風景を描き続けたが、晩年になると再びユダヤ人迫害に遭い、モスクワを逃れ田舎町を転々として過ごし、またその中で多くの風景画を描き残した。

レヴィタンは人生最後の年を、クリミア半島にあるチェーホフの家で過ごした。絶え間ない病気の影響にもかかわらず、彼の最期の作品は増大する光で満たされている。それらは静穏とロシアの自然の永遠の美を反映しているのである。