トルストイ「人は何で生きるか」「人にはどれほどの土地がいるか」

■「人はなんで生きるか」トルストイ

あらゆる人に理解される為に簡素な表現で分かり易く、という趣旨で
1年間に渡って何度も推敲を重ねた人間の本質を問う力作。
日本語題の「なんで」は「なぜ」ではなく「何によって」の意味。


こちらの動画でわかりやすく要約されています。

神に使わされた天使が次の三つの命題を与えられます。
①人間の中にあるものは何か
②人間に与えられていないものは何か
③人間はなんで生きるか

神は人の心の中にいる。なぜならこの世の神とはその心の中にある愛だから。

このトルストイキリスト教観は仏法に通じるものがあります。
万人の心の中に仏性をみとめ、根底に大慈悲の生命がある。
仏法では、愛ではなく慈悲と呼びます。
また慈悲は勇気によって置き換えられるそうです。
現実には、この小説のように美しい姿をした神の使いではないし、
誰もが行き倒れの人を助けるような愛に満ちているとは限りません。
むしろ偏見や疑念、排他性を感じる方が多いこともあります。
しかしどんな人であれ仏性(または神性)があるのだとすれば、
どんなに仲が悪くても通じ合うことは可能なはずです。
直接会いもせず、言葉も交わさず、あるいは冷たくしたり、
一方的な関係では、愛も慈悲もなかなか感じられないと思います。

■「人にはどれほどの土地がいるか」


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いくら広大な土地を持ってても死んだらあの世に持っていけません。
心の財こそ大切なのです。
「自身の宮殿に入るなり」
愛や慈悲と同じように、安楽の地は心そのものであるのです。

 

トルストイの破門
1901年、トルストイロシア正教を破門されてます。
理由は『復活』の中で「聖書を勝手に解釈したり正教を冒涜したりした」とか。
教会側は破門はしておらず勝手に離脱した、などといってるようです。
歴史的には、ガリレオ、ルター、ブルーノなどが破門されてますが、
彼らは真理や原点を見失ったのではなく、独立性や尊厳性を維持したのでした。
人間が自身の存立を脅かすような試練に遭遇した時、何に立ち返るのか?
によってその後の顛末が大きく左右されてくるのだろうと思います。