個性豊かなフランドル絵画

フランドルとは旧フランドル伯領のことで、ネーデルラントともいいます。
現在の、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの低地の地方のことです。
日本ではフランダースという呼び名で知られており、
アニメ「フランダースの犬」で有名なアントワープ大聖堂がある所です。

今回はこの地方において、ルネサンスバロック時代に生きたフランドルの画家たちをざっと概観したいと思います。
たとえばルネサンス期に限定すると、フランドル絵画は、イタリア・ルネサンスに対し北方ルネサンスといわれます。イタリア・ルネサンス人文主義ヒューマニズム)を基に古典の復興をめざし、生き生きとした表情や人体をテーマに描かれたのに対し、北方では、比較的ゴシックの形式や宗教色を残しながらも独創的な絵が描かれています。
フランドルの絵画は、どの画家も極めて個性的であるのが特徴です。

 

ヤン・ファン・エイク
(オランダ: Jan van Eyck、1395年頃 - 1441年)

アルノルフィーニ夫妻像 1434年

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初期フランドルの作品で、フランドル絵画史上最も有名な絵といわれます。
この頃、油彩の技法が確立され、従来のフラスコ(卵を使用した技法)ではできなかった精細なタッチや鮮やかな色彩が表現されています。
絵の中の男女は結婚式の様子をえがいた新郎新婦で、奥の壁に画家ヤン・ファン・エイクのサインがありますが、これは身分差がある場合に立ち合いが必要だったために作者がその証明役だったことを意味しているようです。
14世紀ではペストが流行し、右の女性はその恐ろしさを和らげるためにお腹に詰め物をして膨らんでいるのだそうで、妊娠しているわけではないらしいです・・・。

 

ハンス・メムリンク
(ドイツ Hans Memling, 1430年/1440年頃 - 1494年8月11日)

貞操の寓意(Allegory with a Virgin) 1479年

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2頭のライオンは男性の求愛を指しているのでしょうか。
岩に囲まれた女性は難攻不落の貞操を表しているように見えます。


■ヒエロニムス・ボス
ネーデルラント  Hieronymus Bosch、1450年頃 - 1516年)

快楽の園 1490年から1510年の期間に制作 

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3枚のパネルからなる三連祭壇画
左は神とアダムとイブがいる「エデンの園」、中央は(現世を意味する?)「快楽の園」、右は「地獄」を表しています。

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拡大図です。
ボスの想像の世界が綿密に描かれています。
天国と快楽の園には行ってみたいですが、地獄はあまり行きたくありませんね。

今回はこれだけ。
次回は、バベルの塔で有名なピーテル・ブリューゲルとその家系の人々が描く想像力あふれる世界観。そしてルーベンスや19世紀以降の個性的で楽しい画家たちを取り上げたいと思います。とにかくフランドル絵画は独創的で楽しい絵がたくさんあるんです!