ウィリアム・ブグロー(フランス・アカデミック絵画の巨匠)

ヴィーナスの誕生 (1879)

ブグローの代表作の一つ。
サンドロ・ボッティチェリ作「ヴィーナスの誕生のオマージュ。


ウィリアム・ブグローは、1825年にフランスの大西洋に面した町ロシェルに生まれ、
フランスの美術アカデミーで本格的な絵画を学んだアカデミック美術を代表する画家です。
青少年時代から絵が好きだったようですが、ワイン店を経営する父からは
なかなか理解が得られず、学費等の援助の面で苦労したようです。
それでも余りある情熱で美術学校で絵を習い、めきめきと頭角を現していきます。
(いかなる反対にあおうと、このような内なる情熱こそが道を開くものです。)
日本ではゴッホやモネなど印象派の作品がよく知られていますが、
印象派が登場する少し前の時代に生きた画家であり、
生前は人気が高かったのですが、没後100年くらいは
印象派キュビズムなど他の時代の作品と比べると意外と知られていません。

とにかく凄い作品ばかりなのです!


以下、制作年順に主要な作品を紹介します。
(作品数が多く、ここに挙げていない魅力的な作品もたくさんあります。)
画家の生涯など詳細はまたの機会に・・・。

地獄のダンテとウェルギリウス 1850年

比較的若いころの作品です。ダンテの「神曲」から。
この作品を描いた1850年
(25歳くらいの頃)「ローマ賞」を獲得します。
ローマ賞」はルイ14世が創設した芸術家養成のための奨学金制度です。
ルイ14世は「朕は国家なり」といったフランスの皇帝で絶対王政の象徴のような人物ですが、
芸術に対する造詣は深く、フランスの美術アカデミーの淵源はイタリア・ルネサンスの研究家
で知られるジョルジョ・ヴァザーリフィレンツェに創設した「素描アカデミー」にあります。

羊飼いがアラックスのほとりでゼノビアを見つける 1850年

こちらがローマ賞を獲得した作品です。

以下はすべて1870年以降の熟達を極めた作品となります。
どれも言葉にならないほどの圧巻の作品群です。

浴女 1870年

 

Pendant l'Orage 1872年

 

ニュンペーとサテュロス 1873年

ある批評家はこれを「われわれの世代の最も偉大な絵」と評しています。

ニュンペーとサテュロス - Wikipedia (こちらで拡大図が見れます)

 

Homer and his Guide 1874年

紀元前8世紀頃の古代ギリシャの吟遊詩人ホメロスを描いた作品。
ホメロス叙事詩イーリアス」と「オデッセイア」の作者として有名です。
絵の人物が目を閉じているように、ホメロスは生まれつき盲目だったようです。
詩才のある人物や有名な予言者たちの多くは盲目であったといいます。

オデュッセイア」に登場するスケリア島の王女ナウシカアー
風の谷のナウシカ」はこの王女の名前に由来してるようです。
宮崎駿作品は神話をモチーフにしたテーマや名称がよく用いられてます。


クピド 1875年

 

天国へ運ばれる魂 1878年

 

A Young Girl Defending Herself Against Eros 1880年

 

Day 1881

 

天使の歌 1881年

 

La Nuit 1883

 

ビブリス 1884年

 

Lost Pleiad 1884年

 

バッカス幼年時代 1884年

 

The Shepherdess 1889年

 

プシュケとラムルー 1889年

 

アムールとプシュケー、子供たち 1890年

 

Innocence(清純) 1893年

 

Bacchante 1894年

 

French La Vague(The Wave)1896年

 

Amore e Psiche 1899


いかがでしたか?これはぜひ本物を近くで観てみたいものですね!
細かな解説、感想などはまた追って補足していきたいと思います。


仏典には「心は工(たく)みなる画師の如し」とあります。
ブグローのごとき技術は、画家にとって羨望の的であり、
生まれ持った才能と長年に渡る努力と情熱のなせる賜物です。

想像力に翼が生えたようなものです。
このような技術の基礎を若いうちに身につけることができるのは極めて幸運なことです。
森羅万象を描き切る技能を得て、四方の山々を見渡す境地に至ることができれば、
どんなにすばらしいことでしょう。

ウィリアム・アドルフ・ブグロー(肖像画 1886年