「かもめのジョナサン」リチャード・バック


「ジョナサン・リヴィングストン」長老が言った。
 
「不名誉のかどにより中央に進み出よ。汝のはらからたちの面前にだ」
 
板きれでぶんなぐられたような感じだった。膝の力がぬけ、羽毛はぐったりとなえて、激しく耳鳴りがした。不名誉のかどで中央に?そんな馬鹿な!<限界突破>なんだぞ!連中にはわからないのか!やつらが間違ってる、こいつらの間違いだ!
 
「・・・・・・思慮を欠いた無責任な行為のゆえに」
 
抑揚をつけたおごそかな声がとぎれとぎれにきこえた。
 
「汝はカモメ一族の尊厳と伝統を汚した・・・・・・」
 
不名誉のかどで中央に引き出されることは、カモメの社会から追放され、<遥かなる崖>での一人暮らしの流刑に処せられることを意味していた。
 
「・・・・・・ジョナサン・リヴィングストンよ、汝もやがてはさとるであろう、無責任な行いが割にあわぬものだということを。われらの生は不可知にして、かつはかり知れざるものである。わかっていることはただわれらが餌を食べ、そしてあたうる限り生きながらえるべくこの世に生をうけたということのみなのだ」
 
<評議集会>では決して言葉を返してはならないのだが、思わずジョナサンは声をあげた。
 
「無責任ですって?」彼は叫んだ。
 
「聞いてください、みなさん!生きることの意味や、生活のもっと高い目的を発見してそれを行う、そのようなカモメこそ責任感の強いカモメじゃありませんか?千年もの間、われわれは魚の頭を追いかけまわして暮らしてきた。しかし、いまやわれわれは生きる目的を持つにいたったのです。学ぶこと、発見すること、そして自由になることがそれだ!」